シンポジウムの質問等に対する回答
12/23に開催したシンポジウムでは多くの質問・ご意見を頂戴しました。
ここでは現時点で事業として回答できるものについて抜粋してお答えします。
質問
全体に関して
- 1. 本制度の認定の有無が,各機関でのURA体制構築(URAの雇用)など,各機関の独自性を妨げることになりませんか?
- 2. URAの業務範囲は明確化されていますか?また定義はありますか?
- 3. この認定制度について,大学や研究機関への周知はどのようにされていますか?
- 4. 認定制度の検討はどのような人たちで進めてられていますか?
研修プログラムの概要について
- 5. 東京大学のスキル標準,早稲田大学の研修プログラムとはどのような関係ですか?
- 6. 研修の講師はどう選定されますか?講師は,認定URAや認定専門URAである必要がありますか?また,そうでない場合,研修の質をどのように担保しますか?
- 7. 既存の研修や大学独自の研修はどう扱われますか?科目への振替等があり得るのですか?
- 8. Fundamentalが2日,Coreが3日かかるとのことですが,連続して受けなければいけないとすると,参加が難しくなりそうです。頻回に研修を開催するか,別の研修の読み替え等は検討されていますか?
- 9. 研修の修了判定はどこで評価し,認定にどう使われるのですか?
認定制度の概要について
- 10. 研修受講,認定審査の費用は誰が負担するのですか?
- 11. どこが認定するのですか?認定機関は設置されるのですか?
- 12. 認定期間5年はどのように決められたのでしょうか?
- 13. 既存の研修制度で修了証を持っているURAには,新しい質保証制度で何か考慮される(または優遇される)ことはあるのでしょうか?
- 14. 中小規模の大学ではURAが1~3名と少なく,配置すら困難な大学があります。このような状況の中で,専任職員がURAと同等の業務が求められます。専任職員(総合職等)のURAスキルの修得と研修制度について,中小規模の大学でも導入可能な認定制度の構築について,どのような考えがあるか教えてください。
- 15. 明らかにCore以上の知識・スキルを有する人材(Advancedレベルの人材)も,まずはCoreの研修を受講し,認定URAを取得しなければならないのですか?
- 16. 認定専門URAの専門領域はどういう考え方で設定されるのですか?
- 17. 認定の審査過程はどの程度公開される予定ですか?
- 18. 地域創生コーディネーター,社会連携コーディネーター等は,URAの認定対象になりますか?
- 19. 事務職員として入職した方であっても,自身で勉強しURAを目指す方が増えていると聞きます。そうした方々が目指す目標として,認定を受けることも多くなると思いますので,事務職員出身の意見も反映する形にしてほしいと考えます。
- 20. 認定制度が開始されたら,認定URAをとっていないとURAとして就職できなくなるのでしょうか?
- 20-1. 名称独占についての取り組みについて教えてください。
- 21. URA業務経験が3年以上とありますが,業務内容がURAでも肩書としてはURAを名乗っていません。大学でURAという立場が確立されていて,役職名としてURAとなっていなければ,3年には数えられないのでしょうか?
- 22. 業務機会は,所属する機関によって相当異なります。その結果として経験や実績に大きな差が出ると考えられますが,こうした差異をどう考慮していますか?
回答
全体に関して
- 1. 本制度の認定の有無が,各機関でのURA体制構築(URAの雇用)など,各機関の独自性を妨げることになりませんか?
「リサーチ・アドミニストレーターの質保証に資する認定制度の導入に向けた論点整理」にあるように,大学等を取り巻く環境が激しく変化する中で,研究環境の充実に関与するURAには,大学等における中核的役割が期待されています。また東京大学のスキル標準にありますように,URAが関わる業務は多様であり,従事する業務も機関によって多様です。すなわち,URA体制の構築はその機関の特徴を際立たせる役割を担っていると考えられます。本制度は,多様なURAの業務を明確にしURA個人の能力を認定するものですので,各機関のURA体制その構築に何ら影響を与えず,各機関の独自性を妨げるものではありません。
また,認定をURAの雇用あるいは処遇の参考にされるか否かは各機関のご判断によります。認定されたURAしか雇用できないということにはなりません。したがって,URAの雇用に関しても各機関の独自性を妨げることはありません。 - 2. URAの業務範囲は明確化されていますか?また定義はありますか?
本調査研究におけるURAの業務の範囲は「大学等組織全体を俯瞰しながら,学術的専門性を理解しつつ,自身の業務に関する専門性とセクターに偏らない能力を駆使して,多様な研究活動とそれを中心に派生する様々な業務に積極的かつ創造性をもって関わり,研究者あるいは研究グループの研究活動を活性化させ,組織全体の機能強化を支える業務」としています。
- 3. この認定制度について,大学や研究機関への周知はどのようにされていますか?
現在の検討状況において流動的でない部分については,金沢大学が設けた本調査研究のwebサイト(http://ura-cert.w3.kanazawa-u.ac.jp/)で情報提供をしています。また,2019年10月17日に開催した意見交換会や2019年12月23日に開催したシンポジウムを通じて周知を図っています。試行の結果を含めた成果報告会は2020年3月23日に開催予定です。
- 4. 認定制度の検討はどのような人たちで進めてられていますか?
認定制度の検討をしているメンバーは,URAである人,URAであるとともに統括する立場の人,URAの統括をする立場の人,雇用者側の人で構成されており,かつURA関連団体から参画していただいています。また,本事業の重要事項の審議は,URA関連団体を代表して参加いただいている委員によって行われています。
- ※URA関連団体:リサーチ・アドミニストレーター協議会,研究大学コンソーシアム,学術研究懇談会,大学技術移転協議会,多能工型研究支援人材育成コンソーシアム,医療系産学連携ネットワーク協議会,科学技術振興機構(仕様書記載順)
研修プログラムの概要について
- 5. 東京大学のスキル標準,早稲田大学の研修プログラムとはどのような関係ですか?
今回の認定制度の検討は,平成30年に文部科学省が公表した「リサーチ・アドミニストレーターの質保証に資する認定制度の導入に向けた論点整理」に基づき,東京大学が平成26年に作成した科学技術人材養成等委託事業「リサーチ・アドミニストレーターを育成・確保するシステムの整備(スキル標準の作成)」成果報告書で公表した,いわゆる東大のスキル標準を土台としています。その上で,現在の状況,将来の可能性を考えて必要な科目,内容の追加,内容が現状に合っていない部分の修正・変更をしました。また,早稲田大学の研修プログラムについては,スキル標準と同時期に並行して作成されたため,そのスキル標準に必ずしも整合していないこと,作成されてから数年を経ていることから,早稲田大学の研修プログラムも参考にしつつ,東大のスキル標準に基づいて改めて検討しました。今回検討している研修プログラムについても,今後,定期的に検証が行われ,必要に応じ改訂されていくと予想されます。
- 参考)リサーチ・アドミニストレーター(URA)を育成・確保するシステムの整備(スキル標準の作成)通称:東京大学スキル表標準(https://www.mext.go.jp/a_menu/jinzai/ura/detail/1349663.htm)
- リサーチ・アドミニストレーター(URA)を育成・確保するシステムの整備(研修・教育プログラムの作成)通称:早稲田大学の研修プログラム(https://www.mext.go.jp/a_menu/jinzai/ura/detail/1315870.htm)
- 6. 研修の講師はどう選定されますか?講師は,認定URAや認定専門URAである必要がありますか?また,そうでない場合,研修の質をどのように担保しますか?
現段階では,URA関連団体の7団体からの委員で構成される研修プログラム検討ワーキンググループで検討し,各科目の内容を講義していただくに適切な講師候補者を7団体だけでなく広い範囲から推薦・依頼をして,お引き受けいただいた方にお願いしています。なお,科目毎に2~3名の講師を選定しており,研修会にはそのうちの誰かに講師を務めていただくことにしています。また,教材作成に当たっては,これらすべての講師候補者に加えて,教材作成協力者にもご協力をいただいて,教材を作成しています。現在の講師予定者は,まだ認定制度ができていませんので認定URA,専門認定URAの認定を受けている方はおられませんが,今回定めようとしている認定URA,専門認定URAの審査基準を現段階で満たしていると予想評価できる方々です。勿論,講師方々はそれぞれ認定URAや認定専門URAの方々が基本ですが,専門分野によっては,認定URAや認定専門URAではいらっしゃいませんが,その分野の高いレベルを有する優れた専門家にご担当いただく場合も想定されています。なお,将来的に認定機構が発足した場合は,その機構が選定することになる方向で検討しています。
- 7. 既存の研修や大学独自の研修はどう扱われますか?科目への振替等があり得るのですか?
関連団体等で行われている既存の研修や大学独自の研修でなされている内容を調べ,本研修プログラムで求めている内容(レベルも含めて)が含まれているかを調査し,入っているものについては科目の読み替えをする方向で検討していく予定です。
- 8. Fundamentalが2日,Coreが3日かかるとのことですが,連続して受けなければいけないとすると,参加が難しくなりそうです。頻回に研修を開催するか,別の研修の読み替え等は検討されていますか?
現在検討している科目構成の場合は,全て通して受講する場合はFundamentalが3日半,Coreが4日程度必要になります。ただし,科目ごとに修了書を出し,FundamentalあるいはCoreの研修15科目全ての科目修了書が揃った段階で当該レベルの修了証明書を出す設計をしています。したがって,各科目は一度の研修内で全ての科目を修了する必要はなく,別々の機会に開催される研修を受講し,最終的にFundamentalあるいはCoreの研修15科目全ての科目修了書が揃えば当該レベルの修了証明書を出すということで検討しています。別の研修の読み替えについては,読み替えを可能にする方向で検討中です。また,研修の実施体制についてもオンラインでの実施や地域ごとでの実施など様々な可能性を検討する予定です。
- 9. 研修の修了判定はどこで評価し,認定にどう使われるのですか?
研修の修了は科目ごとに実施される試験で,すべての科目に合格することとしています。認定申請をする前提として,研修を修了こととし,申請書類に研修の修了書を求める方向で検討しています。
認定制度の概要について
- 10. 研修受講,認定審査の費用は誰が負担するのですか?
受講や認定の申請をする本人あるいは所属機関が負担することを想定して検討しています。価格設定等についても今後の検討課題です。
- 11. どこが認定するのですか?認定機関は設置されるのですか?
認定する機関(団体)を新たに設立することも含め今後検討していく予定です。認定する機関が設立される場合は,研修の受講料や認定審査料を収入として,独立採算で運営できることを前提に制度設計が進められると予想されます。
- 12. 認定期間5年はどのように決められたのでしょうか?
認定時のスキルをどの程度の期間,保証できるかという観点から,他の認定制度も参考にして,5年としています。
- 13. 既存の研修制度で修了証を持っているURAには,新しい質保証制度で何か考慮される(または優遇される)ことはあるのでしょうか?
既存の研修制度の修了は,科目ごとに既存の研修制度による研修との読み替えを可能にする方向で検討しています。
- 14. 中小規模の大学ではURAが1~3名と少なく,配置すら困難な大学があります。このような状況の中で,専任職員がURAと同等の業務が求められます。専任職員(総合職)のURAスキルの修得と研修制度について,中小規模の大学でも導入可能な認定制度の構築について,どのような考えがあるか教えてください。
大学によってはURAが広範な業務を担当したり,専任職員がURA業務を担当されているケースが少なくありません。こうした場合,URAや専任職員の方が体系的に知識やスキルを身につける機会が十分ではないことがアンケート等で明らかになっています。したがって,研修プログラムについては,URA業務に関する広範な知識を体系的に学ぶとともに,大学の規模等にかかわらずURA業務に関する知識やスキルを習得したい人であればだれでも研修を受けられるものになるよう検討しています。
また,本認定制度は,URAと呼ばれていることを申請要件としない設計ですので,URA業務(類似の業務を含む)に従事されている専任職員の方が申請され,認定されることに障害はありません。
- 15. 明らかにCore以上の知識・スキルを有する人材(Advancedレベルの人材)も,まずはCoreの研修を受講し,認定URAを取得しなければならないのですか?
Advancedレベルの人も,URAの広い業務に対する基本的な知識を持っていることが必要と考え,Coreレベルの研修の修了を求める制度設計にしています。
- 16. 認定専門URAの専門領域はどういう考え方で設定されるのですか?
現在,ニーズの調査等を進めながら検討しています。URAを雇用する側,URAとして雇用される側の両者にとって意味のある領域を検討して設定する予定です。
- 17. 認定の審査過程はどの程度公開される予定ですか?
審査員のお名前は審査員の任期が終了後,公表することを考えています。不認定の場合は,申請者に理由を伝えるという制度設計を検討しています。
- 18. 地域創生コーディネーター,社会連携コーディネーター等は,URAの認定対象になりますか?
この認定制度は,職名や呼称に関係なく,従事している業務に基づき認定するものです。したがって,URAあるいは類似業務に該当される職種については認定対象になるということで検討を進めています。
- 19. 事務職員として入職した方であっても,自身で勉強しURAを目指す方が増えていると聞きます。そうした方々が目指す目標として,認定を受けることも多くなると思いますので,事務職員出身の意見も反映する形にしてほしいと考えます。
いま検討されている認定制度は,URAという職名の下で業務に当たっている方だけを対象としているのではありません。職名に関わらず,URA業務(類似業務を含む)に従事されている方が対象です。したがって,事務職員の方が特に不利になるということはないと考えています。本調査研究においては,URA業務を次のように定めています。
大学等組織全体を俯瞰しながら,学術的専門性を理解しつつ,自身の業務に関する専門性とセクターに偏らない能力を駆使して,多様な研究活動とそれを中心に派生する様々な業務に積極的かつ創造性をもって関わり,研究者あるいは研究グループの研究活動を活性化させ,組織全体の機能強化を支える業務。
- 20. 認定制度が開始されたら,認定URAをとっていないとURAとして就職できなくなるのでしょうか?
この認定を受けていなければ,URAとして業務に当たることができないというものではありません。あくまでもその人が認定URAあるいは認定専門URAの人材像で示す能力を有しているという能力認定です。なお,人材像は現時点の案であり,今後試行等を踏まえ修正される可能性があります。
認定URAの人材像:URAとして関わる業務全般の知識を一定レベル以上備え,かつ大学等,我が国の研究組織での一つ以上の中核的業務*の経験を有し,研究者,研究グループの研究活動の活性化に主体的に関わる能力を備えた人材。
認定専門URAの人材像:URAとして十分な実績を有しており,一つ以上の中核的業務*に関する卓越した能力を備え,組織内外の関係者と協力して研究者,研究グループの研究活動の活性化に重要な位置付けで寄与するとともに,組織の機能強化に貢献できる人材。
- *中核的業務…当該URAが主に従事している業務のこと
- 20-1. 名称独占についての取り組みについて教えてください。
国家資格ではないので,名称独占の対象にはなりません。
- 21. URA業務経験が3年以上とありますが,業務内容がURAでも肩書としてはURAを名乗っていません。大学でURAという立場が確立されていて,役職名としてURAとなっていなければ,3年には数えられないのでしょうか?
URA業務経験とは,URAという肩書の下での業務経験という意味ではなく,従事した業務内容がURA業務(類似業務を含む)である経験という意味です。つまり,URAという肩書を要求しているものではありません。
- 22. 業務機会は,所属する機関によって相当異なります。その結果として経験や実績に大きな差が出ると考えられますが,こうした差異をどう考慮していますか?
URAにはその場その場で適切な創意工夫をして研究活動を活性化させ,組織全体の機能強化を支える業務をすることが求められています。本調査研究では,大学ごとに異なる環境の下で,各URAのその環境に適した業務の経験・実績をもとに認定する制度の構築を目指しており,環境が異なるところに,同じ物差しを当てることにならないよう制度を検討しています。
すなわち,各URAの個々の環境の下で,URAとしてどれだけのことができているかを判断の材料とし,組織が異なるURAを比較して判断する制度ではありません。機関によるチャンスのレベルの差(たとえば,獲得した資金の規模や支援した申請の採択率の違い)が認定の判断に影響しない制度になるように検討しています。